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引き戸を考える
現在の家造りの計画の際、室内の出入り口の建具は引き戸でとう御希望を多く聞きます。
住宅の室内の出入り口での引き戸は、通常、一枚の扉の片引き戸が一般的。
理由は?と聞くと、
開き戸だと指を挟む事が心配だから、
少しだけ開けている事が出来るから、
普段は開けっ放しに出来るから、
開口が蝶番・戸当たりがない分広いから、
通路部分の空間を有効に使いたいから、
といった具体的な生活を考えての方もみえれば、
「?」となってしまう方も。
人に言われたり、どこかの本を読んでの受け売りという方もみえます。
物事には、常に表と裏があり、長所もあれば短所も必ずあります。
引き戸の短所を考えた事あります?
使い勝手や利便性ではなく、住宅のコスト面が真っ先にあげられます。
あるメーカーのカタログを見れば、開き戸の定価が59100円に対して、片引き戸の定価は79800円になっています。
将来的に鍵なしの建具から鍵付に改造する場合は、開き戸は取っ手部分を交換するだけですが、片引き戸の場合は扉部分と枠の部分の加工も必要になります。
そして、一番に気を付けるべき事は、設置する場所の制限と建具の寸法。
これは、本職の建築士が書いた図面でも考慮されているか?疑問の思う事も多い注意点なのですが、片引き戸の扉を引き込む壁の箇所を入隅とするようなそれぞれの壁面の交点としてしまう間取りです。
一般的な尺モジュールで考えた場合は、一般的な寸法の1間用の片引き戸は納まりませんので設置不可になります。
通常の1間用の片引き戸(1645タイプ)の有効開口巾786プラス扉枠の寸法は834ミリ。
尺モジュールでの105の柱に対して壁のボードを直貼りとした場合の有効巾は780ミリ。
明らかに納まりません。
こういった場合は、巾の狭い片引き戸を使用する為に、まだ新しい規格の幅狭タイプを使用する必要があります。
また、階段部の昇降箇所に隣接する際は、設置寸法だけでなく、安全面の配慮から使用を避けるか?更に開口巾の狭いタイプを使用する事も必要になります。
片引き戸では、設置する箇所で施工に制限があったり、有効開口巾が変える必要がある事、
もうひとつは、そういった入隅部での扉の引き込む部分では柱が無くなってしまう為に、構造的な強度の配慮も必要であるという事です。
この箇所が筋交いを設置するような耐力壁となる箇所となる場合は、柱を無くす事は出来ません。
その為に、一般的な構造強度を優先した家造りでは、入隅部の片引き戸は設置を避ける事になります。
もう一点、知っておくべき事は、24時間換気の考えでは、開き戸は扉と床の隙間を10センチ以上設ける事が義務付けられているに対して、引き戸に対しては規定が無い事。
つまり、引き戸は気密性の配慮はされていないと考えれている事になる事です。
結果的には、同じ通気性が設けられる事になりますが、構造的には性能が違うという判断がされている事になります。
それ以外にソフト面での配慮もありますが、これは別の機会に。
住宅に使用されている建具の扉には、規格品でも何種類もの開口巾のモノがあります。
開口巾は、設置される場所毎に構造的納まりに合わせて変える場合もあれば、使用される部屋の目的で変えられる場合もあります。
使用される部屋の目的で代表的なパターンがトイレの出入り口の扉です。
これは、開き戸でも引き戸でも同様です。
既存の多くの住宅では、トイレの扉の開口巾は、一番小さな規格のサイズを使用して、一般的な部屋の扉の開口巾と区別をするという慣習がありました。
今現在の住宅でも、この慣習に従っている住宅が多くあります。
でも、実際のこれから家造りでの生活、家族構成の変化を考えれば、トイレの扉の開口巾を小さくするという今までの慣習が正しいとはいえないと考えています。
御家族の日常の生活を考えた家造りはです。
子育て世代での生活では、お子さんを連れてのトイレの練習に一緒に入ってあげる。
高齢者の御家族の生活では、介護の為に一緒に付き添うという利用方法も想定をしなくてはいけません。
御家族の日常の生活を考えた家造りでは、開口巾は大きい方がメリットがあります。
家造りの計画では、日常の生活で利用する部屋への出入り口の形状・開口巾の適正化も大切なポイントです。
形状・開口巾の適正化は、日常の生活習慣・大きな荷物の出し入れ、住宅の構造的な納まりといった要因を満たす事が条件です。